修士論文の作り方(要約)
http://itolab.is.ocha.ac.jp/~itot/lecture/msthesis.htmlこういうの学生の頃読んでいればと思う反面、学生の頃今よりさらに意識低い系だったから読んでいても活かせなかった気がする。
2014/12/12 12:01
修士課程を修了して2年近く経った。あの頃は嫌で嫌で仕方がなかった実験や論文執筆も今では懐かしい。なんとなく大学に戻ってみたい気もする。というより働きながら研究やって博士を取りたい。もちろんタダで。(せっかく高等教育を受けたのにこんな甘い考えしかできないなら、大学院に行ったのは失敗だったのだろうか)
まあそれはともかく、「学生の頃もっとあれをやっといた方が良かった…」という思いを持っている人は思いの多寡を別にすれば、それなりに多いと思う。僕にもその嫌いがあるようで、今になってアカデミックな研究分野への興味が増えてきたように思う。研究者としての興味じゃなく、あくまで科学ファン的な興味かもしれないけど。
そんな中である記事を知った。
http://itolab.is.ocha.ac.jp/~itot/lecture/msthesis.html
なんとなくそういう気になったので、僕なりにまとめようと思う。現役の大学院生の役に立てば幸いだ。
主な対象
この記事は主に修士課程の学生に向けられて書かれている。もっと細かく言えば、数回程度学会発表を経験していて、これから修士論文を書こうとする学生が主な対象のようだ。もちろん発表経験のまだない大学院生になりたての学生や大学院への進学を考えている学生も読んでおいて損はない。
なんでまとめるの
- 自分のため
- こんな記事ですら読むのが億劫に感じる僕のようながのため
1がメイン。2はついでだ。そもそも忙しい大学院生はこんなクソブログを読んでいる暇はないはず。
主な主張
この記事でまず一番に言われているのは「修士論文は学会論文より文章の量が多い」ということである。なぜ多いのか、その理由は以下の2点に集約される。
学会は、その分野で研究を行っている研究者や学生が多いため、基礎的な背景や理論に関する説明は省略することが多い。しかし修士論文はもっと広い分野で読まれることを想定しなければならない。そのため学会論文と比較して文章量が多くなる。
各省のポイント
序章
「こんなもん常識やろ」というような学会発表では省略したところから書き始める。理系なら文系、文系なら理系の大学院生が読むことを想定して書くのもいいかもしれない。
端的にいえば、「画像処理とは…である」というような説明は、学会発表原稿では初歩的すぎて失礼にあたるかもしれません。 しかし修士論文では、時として、そのようなレベルの説明から序論を始めることが必要な場合もあります。
関連研究
絞り込む必要なし。その分野の黎明期の研究から書き始め、なぜその論文を紹介するのか・自分の研究とどう関係するのか、まで書く。関連研究を分類して節ごとに分けて書くとなお良い。
提案手法・実行結果
なぜその手法を採用したのかをきちんと書く。また、これはよく言われていることだと思うが「論文を読んだ人が実験を再現できるようにする」というのも重要だ。手法と結果を明確に区別する、というのも重要。重要なこと大杉。
手法と結果の区別を明確に切り分けてください。 自分の開拓した手法は、詳細にいたるまで、全て手法の章で説明してください。 結果を読むまでわからない部分がある、ということのないようにしましょう。 逆に、手法の章で結果を見せるのは極力避けてください。
学会発表原稿では、うまくいった結果だけを載せる、という場合もあります。 しかし修士論文では、うまくいかなかった結果や、途中で断念した実験なども、 できるだけ全部入れましょう。 これらを全部入れることが、皆さんの2年間が充実したものであることの証拠になりますし、 またその研究を引き継ぐ後輩への参考になる場合もあります。
結論
各章の振り返りと自分の研究の成果をアピール!!今後の課題については指導教員に聞け!!
修士論文や博士論文で、今後の課題をどう述べるか、については意見の分かれるところです。 私は学生の時、「学位論文は研究のゴールなんだから、課題なんかあってはいけない」と審査員の一人に指導されました。 しかし逆に、「研究にゴールなどあるわけないのだから、今後の課題のない研究などない」という立場の人もいます。 私は現実論として、少なくとも伊藤研究室のほとんどの修士論文には今後の課題が存在するものとして、今後の課題を書くように勧めています。
謝辞
学会発表を共著した共同研究者、その他アドバイスをいただいた方も忘れずに。
細かいチェックリスト
- 修士や博士の論文はpaperではなくthesis
- 主語は「本報告」ではなく「本論文」
- 「我々」「著者ら」や英語の「We」は不自然であると解釈される場合があるから指導教官に確認
- 全ての図、全ての表、全ての参考文献を本文から引用しているか
- 英文・英単語記述の中に全角が混在していないか
- 参考文献の記述の統一性
- 日本語人名のフルネーム表記と名字だけ表記の混在
- 外国人名のファーストネームとファミリーネームの順番の不統一
- 太字や斜体などの部分的な用法の不統一
- 発行年、巻、号、ページ数の記述形式の不統一
注意事項
この記事内でも言われているが、分野によって書き方が違うことがある。ここに書いてあることすべてをそのまま使うのではなく、逐次指導教官に相談しよう。
参考資料
暦本純一氏:修論(D論)執筆の注意ポイント
垂水浩幸氏:卒業論文、修士論文執筆上の注意事項メモ
金森由博氏:論文執筆のためのチェックリスト
http://kanamori.cs.tsukuba.ac.jp/docs/writing_paper_checklist.pdf
梅谷信行氏:学位論文執筆への注意点メモ
天野浩文氏:卒業論文・修士論文を書く人へ
http://isabelle.cc.kyushu-u.ac.jp/~amano/how_to_write/
谷口忠大氏:卒論・修論の注意点
これから修士論文を書き始めようと考えている人へ知っておいて欲しい6つのこと
http://d.hatena.ne.jp/s_locarno/20120325/1332680751
さいごに
修士論文の作成を経験したものとして、現役学生に上から目線でアドバイスしようと思う。
たくさんアウトプットしよう!
手始めにこの記事(このブログじゃなく元記事ね)をまとめてみよう。大学院生は論文や書籍を読んでインプットが多いはずだ。アウトプットするような機会や時間がないと思うかもしれない。しかし、アウトプットの場はなんでもいい。ブログだってTwitterだってあるし、パワポにまとめてゼミの場で紹介してもいい。機会がなければほかの学生を巻き込んで勉強会を主催するのもいいと思う。大学は色々な分野の人間が交流しやすいように作られているはずだ。この機会を活かさないのはもったいない。それにアウトプットすることは、インプットした情報を咀嚼する作業が入る。深い理解にもつながるし、インプットの効率も上がるはずだ。
心身を大切に!
大学院生は昼夜逆転する人も居るが、そんなのができるのは若いうちだけ。そうでない人もいるが、そういう人は寿命を削っていると思う。体は資本だ。どんな分野であれ大学院を卒業したらプロとしてやっていかなくてはならない。心身を健康に保ちつつ最高のアウトプットを求められる。今のうちに練習しておこう。
要約なのに長くなった!おわり!